I. 省エネ発音の全体像:起きやすい場所と単語
[1] センテンスのリズムの谷間
「英語にはリズムがある」と、よく言われます。
どういうことでしょうか?
次の4つのセンテンスを聴いて、このことをちょっと考えてみてください。
そうです。「リズムがある」というのは、
センテンスの中でアクセントをつけて強調して発音される部分(強音部)と
弱く発音される部分(弱音部)があるということです。
上のサンプルでは、強音部にくる単語は PLANE, READY, TAKE OFF の3つです。
この強弱は息の強さの違いによってつけられます。
(いっぽう、日本語は息の強さが一定なので、平たく聞こえます。)
強音部にある単語のアクセントのある母音は強く、長く発音されることになります。
大切な点はこの強弱がほぼ交互に現れることによって英語独特のリズムが生まれること。
このリズムを意識することは省エネ発音を学ぶ際、とても大切です。
リズムの谷間の弱音で省エネ発音が使われることが多いからです。
(個別の単語を見ると、弱く発音する弱形が多用されます。弱形を省エネ発音の一部と
考えることもできます。)
そして強音部はほぼ同じ間隔で登場します。
サンプル音声をもう一度聞いて、この点を確認しましょう。
この4つのセンテンスのリズムをイメージであらわすとこうなります。

3つある強音部の山、PLANE, READY, TAKE OFF のうち
PLANE と READY にはさまれた弱音部の谷間にくる単語に注目しましょう。
上の波のイメージの黄色い箱の部分です。
この谷間の単語は例文の [A] では is という一語のみ。
例文の[B] →[C] → [D] と進むにつれ単語数が多くなったり単語自体が長くなったりしています。
でも、“PLANE”と発音してから”READY”と発音するまでの時間はほとんど変わりません。
さらに PLANE から READYまでに費やす時間と
READY から TAKE OFF に費やす時間もほぼ同じです。
ためしに、自分でも強音部の山、PLANE, READY, TAKE OFFでリズムを
とりながらきいてみましょう。山のところで机の端など、たたきながらマネしてみてください。
強音部の山にはさまれた弱音部の谷間の部分に入る語が増えても、
この等間隔のリズムがほとんど変わらないのです。
谷間に入る語が多くなるほど、リズムの等間隔さを乱さずに話すには
谷間の部分で話すスピードをあげないとならなくなります。
でも、早口にすべての語を発音するのは限界があります。
人によっては、もともと早口が苦手な人もいます。
そのため谷間の部分で 省エネ発音が活躍することになるわけです。
省エネ発音を使って谷間の部分にかかる時間を圧縮してしまうのです。
PLANE と READY の間の谷間にくる単語は、このリズムを乱さないために
省エネ発音を使って、発音するのに必要な時間を短縮しています。
ought to be ⇒ oughda be (アウラビ/アウダビ) と省エネ発音
would have been ⇒ wouda bin (ウダベン) と省エネ発音
「早くて聴きとれない」というのは、しばしばこの弱音部の圧縮のせいです。
「早い」と言っても、実際には1つのセンテンスの中でゆっくり目の強音部と、
圧縮してサラッと流されるので早く 聞こえる弱音部が同居しているわけです。
上の音声サンプルは省エネ発音とは言え、かなりわかりやすく発音していますが、
これが、カジュアルなリラックスした会話だとさらに省エネ度が高くなっていきます。
以上、 センテンスの谷間、弱音部で省エネ発音が起きやすい、という点でした。
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