英語の実力を大きく伸ばしていくためには多読が必須です。
今でこそ多読への認識が一般化してきましたが、
「英語の達人」と呼ばれるような人たちは、
いつの時代でも大量の英文を読んできました。
英語をマスターするための絶対条件といっても過言ではありません。
多読のメリットを並べるときりがありませんが、
主なものをいくつかあげてみます。
1.知識としてだけ持っていた語彙や文型、文法項目等が
現実の自然な文脈の中で使われている例に大量に出会えるので
定着が深まる。
それまでは教科書や参考書でのみ触れてきた語彙や文型が
自分の興味のある内容の素材(本・雑誌・ブログ等)の中で、
「生きた」英語として活躍しているのに出会うのは一種の感動です。
読めば読むほど、そうした語彙や文型の使われ方が
自然に自分でも身に着いていきます。
2.知識が深く定着することで、英語を読む時も聞くときも
余裕が出てくる。
英語そのものの理解に脳のリソースを使う割合が減っていくので
(=脳内における英語の処理の自動化)その分、脳が他のことをする
余裕が生まれます。たとえば、読むことに関して言えば、
読んだ内容をより深く記憶できる。聞くことに関して言えば
相手のボディランゲージをもっと観察するとか、
相手の言葉を聞きながら、自分はどう答えるのが
ベストなのか考えたりできます。(リスニングとの関係は後述)
3.文脈の中で文型や文法項目がどのように働くのか、
様々なパターンに出会うことで、英語のセンスが磨かれる。
いくら勉強しても、英語のありとあらゆる文型や言い回しを
頭で把握するのは大変なことです。
でも多読で英語のセンスを磨いていくと、
頻出する文型や言い回しならば、調べなくても
これを理解する勘が養われていきます。
4.語彙を増やすことができる。
頻出語彙には何度も会うので、自然に語彙が増えていきます。
ただし、多読だけで語彙力が短期間で大きく伸びることはありません。
(この点、後述します。)
語彙を効率よく身に着けるには、語彙増強用の教材や、
多読においても辞書を上手に活用することが必要です。
多読は他の3技能にも大きく貢献
多読というとリーディングのことばかり考えてしまいますが、
実はリスニングやライティング、スピーキングにも好影響を与えます。
■リスニング:多読することで、良い影響が誰にとっても
必ず明らかに出てくるのがリスニングです。
その理由の第一は、多読で鍛えられる直読直解力。
直読直解とは「(1)英語を英語の語順で返り読みせず、
(2)日本語を介することなく
(3)立ち止まらずに読みながら瞬時に内容を理解していく」読み方。
これがリスニングに非常に効くのです。
リスニングも (1)英語を英語の語順で理解するしかありません。
耳に入ってくる言葉を次々と追っていくわけですから。
(2)一瞬でも日本語に訳したりしていたら、
その間に、相手はどんどん先にいってしまい、
そこから先はもう分からなくなります。
(3)一瞬で内容を把握しないと、
相手が言葉を続ければ続けるほど
脳内の処理が間に合わなくなり、
そのうち追いつけなくなって分からなくなります。
ですから直読直解で読める文章のレベルが高くなるほど、
そして直読直解で読めるスピードが速くなるほど、
リスリング力も伸びるのです。
多読がリスニングに与える好影響は他にもあります。
多読によって、多くのコロケーション(どの言葉とどの言葉が
組みあわせで使われるか)や、文型に何度も出会うことで、
リスニングにおいても、相手が次に口にしそうな言葉を
先取りして推測することが出来るようになっていきます。
その分、脳の負荷が減るので、聞くことがラクになるのです。
■ライティングとスピーキング
多読を続けていくと、特にあなたの注意を引く表現や
文型に出会うものです。
そういう表現や文型は、何度も出会っていくうちに、
覚えようとはしなくてもいつの間にか覚えてしまうものです。
これをライティングやスピーキングに生かすことが出来ます。
和文英訳するのとはまったく別次元の英語が書け、話せるようになります。
ただ、スピーキングに関しては、
瞬時の反応力が肝心なので、いわゆる瞬間性作文力が
出来ていることも大切になってきます。
それでは、以降は多読に関する重要ポイントを、まとめていきます。
まずは、直読直解力を身に着ける
多読では(上述しましたが)、
「(1)英語を英語の語順で返り読みせず、
(2)日本語を介することなく
(3)立ち止まらずに読みながら瞬時に内容を理解していく」
「直読直解」が基本中の基本です。
直読直解が出来ないと本当の意味で「英語を読める」とは言えません。
学校でずっとやってきた訳読式の読み方は、
きつい言い方をすれば
英語を活用して日本語を読んでいるようなものです。
漢文の読解をやっているのと大差はありません。
まずは、全てのセンテンスを精読でカンペキに理解できる文章を
直読直解できるようにしてください。
多読においては、
全てのセンテンスをカンペキに理解できなくても構わないのですが
直読直解の基礎をトレーニングしている段階では
いい加減な読み方を排除するために
カンペキに理解できる文で練習したほうがいいのです。
●スラッシュリーディングについて
精読でカンペキに理解できる英文であっても、
なかなかだ英語の語順で読めない人は
スラッシュリーディングの練習をするといいです。
(スラッシュリーディングについては、RareJobさんの
この記事によくまとめられています。)
もし、ある文章がスラッシュリーディングの練習用に難しすぎる、という場合は
思い切ってレベルを落としてみてください。
【自分にあったレベルとは】
ゆっくりとでもいいので直度直解できるようになったら、
自分のレベルに合った素材でとにかくたくさん読んでいきます。
ざっと目を通してみて文章の内容が
7割程度以上は把握できるものなら
あなたにあったレベルと言えます。
「7割程度以上」といっても厳密なものでなく
ある程度感覚的なものです。
目安としては、内容のポイントとなるキーワードは
ほとんど知っている。
それ以外の単語は知らないものが多少あっても
文脈や文章全体の内容をもとに、その意味を大体は推測できる。
そのレベルの文章というところです。
これを「未知の単語数」という切り口で見ると
10単語につき1単語以上の未知の語があると
7割程度以上の内容把握は難しくなりがち、というところでしょうか。
これには厳密なデータがあるわけではないので
感覚的な判断を補う参考的数字だと考えてください。
そして、7割以下の把握力で読むと、知らない語彙や理解できない部分を
当て推量で読む割合が増えてしまいます。
そうすると、もし自分では読めたと感じても、
実際には勘違いしたままの「すべり読み」になってしまいがちです。
また、7割程度以下の把握しかできない文章というのは、
一般的に言って、読むストレスが大きくなりがち。
疲れてしまって続けられないのでは、
元も子もありません。
辞書は使わないほうがいいのか
「多読では辞書は使ってはいけない」等という
勘違いしたことを言う人達がいます。
「辞書を使わなくても内容が十分に理解できる程度のもの」という
ひとつの目安が一人歩きしてしまって、都合よく
安易に解釈されてしまったのかも知れません。
で、多読と辞書の関係を突っ込んで考えた場合
多読の理想像を語るのであれば、
辞書は使わずに済ませられれば
大いに結構なことではあるのです。
多読の理想像とは、、、
「辞書は引かなくても重要な語彙には何度も出会ったために、
その意味が文脈から大体分かるようになった。
たとえ英和辞典に載っている日本語の定義は知らなくても、
その語彙を感覚的に把握している。」
そういう状態になることです。
でも、この理想の境地に達するには、
実に膨大な量を読む必要があります。
これは実際問題として難しい。
よほど英語大好きで、時間もたっぷり作れる人でないと無理。
一つの単語に何度も別の文脈で出会って、
自分で「こうだろう」と考えていた意味を再確認したり、
別のニュアンスがあることに気づいて
自分の考えていた意味を修正・補足したり。
そういったプロセスが必要だからです。
ですから辞書をうまく活用することが大切になってくるのです。
●辞書の上手な使い方●
知らない単語や表現が出てきても、
そこで立ち止まって辞書を引かずに、その意味を推測しながら
どんどん読み進めていくことが多読では大切です。
そうでないと直読直解力は鍛えられません。
辞書を引いて読むことを中断したり、
英和辞典で頭がしょっちゅう日本語モードに戻ったりしていたのでは、
進歩は望めません。
ではどのように辞書を活用するか?
未知の語彙に出会った時は以下のようにするのも一つの良い方法です。
1. 読みながら前後の文脈からなるべく素早く意味を推測する。
(素早く推測する理由は、この能力を鍛えることで
リスニング時におけるとっさの推測力も伸びるからです。)
考えこまずに感覚的に推測するだけでよい。日本語に訳そうとしないこと。
不明な単語にマークをつけておく。
2. その文章を読み終えたら、(←区切りのいいところでもいいです。)
全体の内容をもとに今度はじっくりと推測してみる。
3.辞書で意味を確認する。
そうやって脳みそを絞ってから辞書で意味をチェックすると、
印象に残るので記憶に残りやすくなります。
知らない語彙の全てを辞書で調べる必要はありません。
その文章の理解上、カギとなる語だけは確認したほうが
長い目で見て効率が良くなります。
ナマ英語の素材に挑戦するかどうか
あなたも、なるべくなら、自分の好きな分野の文章を
ナマ英語の素材、つまり
ネイティブがネイティブ向けに書いたものを
読みたいと思うかも知れません。
「7割程度以上」をクリアしているのなら、
もちろんそれが一番です。
じゃあ、7割程度に満たない場合どうするか。
そこはちょっと微妙なところです。
ひとつは、もう少し我慢して
無理なく直読直解できる読み物にレベルを落とす。
多読でレベルを落として始めることは
「急がば回れ」で、絶対と言えるほど良い結果に結び付きます。
もう一つは、
すでにあなたのレベルがそれなりに高い場合。
たとえば、「ラダーシリーズ」ならば
レベル4はラクに読めるようになったので
レベル5に挑戦している、くらいのレベル。
その場合は「どうしても今読みたい!」という強烈な動機がある読み物ならば、
ナマ英語の素材に背伸びして挑戦するのもいいです。
最初のうちは精読に近い読み方をしないと
手に負えない箇所もあるかも知れませんが、
同じ分野、それもなるべく狭く限った範囲の素材だと
表現や語彙も重要なものは頻繁に出てくるので
まもなく慣れます。
また、ノンフィクション系の場合は、
内容に強い興味があるということは、
その分野の背景知識もすでにそれなりに持っているでしょうから
慣れるのに必要な読書量も
比較的少な目ですみがちです。
実際、仕事や留学で何がなんでも
大量の文献を限られた時間で読まなければならない。
そんな状況に置かれた人達は、
最初はワンパラグラフ読むだけでも大変な文章でも、
なんとかゴリゴリと読み続けていくことで
次第に直読直解で、かつ、より早く読めるようになっていきます。
ナマ英語の素材選び
さて、ナマ英語の素材選びですが、
自分が好きな分野の記事やブログ等をウェブで読むという方法はおススメ。
無料ツールを使えば辞書をひく労力をゼロにできます。
好きな分野ならば、最初は多少たいへんでも興味を持って続けられるし
ウェブだと無料でさまざまな記事が読めるからです。
音楽、映画、セレブ系、男女関係、料理、野球やゴルフ、
不思議系、車やバイク・・・
アニメに詳しいあなたなら英語ネイティブのアニメオタクの人と話題を作れる。
時事ニュースなんか日本語の新聞でもあまり読まないけど
アダルト系なら英語だって読んでみたい!、という人もいるかも^^;
とにかく・・・「好きなモノ!!」で読むのが一番。
オマケの効果として、映画や海外ドラマの理解を深める、背景知識も自然に
身についていきます。
あなたの好きな分野の名前でググッて探せばいいんですが、
ある程度質の良いもので、コンスタントに新しい素材を見つけるには、
オンライン版のある人気雑誌のサイトでお気に入りのものを見つけるのもお勧め。
オンライン版だと、プリント版よりも読者からの投稿記事や身の上相談とか
ゴシップ的な 記事が多めに提供されがち。
こうした記事は日常の会話口調で書かれているので、読みやすいし、
口語英語表現の宝庫です。
インタビューもお勧めです。
あなたの好きな分野で、必ずお気に入りの雑誌、お気に入りのコーナーが
見つかるはず。
しばらくそこに集中してみましょう。
最初は毎日10分でもいいから、とにかく始めて
そして継続しましょう。←「続ける」ことが一番大切!!
最初はちょぴりシンドクても、いつも登場する語彙や表現には限りがありますから
それを中心に覚えていけばいいのです。
自分の興味のある分野に長い記事しか見つからないのなら
記事の最初と最後の段落だけ読むのだっていいです。
そのまま話題づくりにも役立ちます。
無料の辞書ツール
Webの画面で多読をすることの大きな利点は、無料のツールを使って、辞書をひく
手間をほぼゼロにできること。こんなツールがあります。
1.グーグルクロームのGoogle Dictionary
グーグル公式の拡張機能なので安心。
英単語をダブルクリックすれば日本語が表示されます。
2. POP辞書
(http://www.popjisyo.com/WebHint/Portal.aspx)
3. Babylon 8
(http://www.babylon.com/jpn/index.php)
以上、多読に関して大切なポイントをまとめてみました。
コメント
[…] 英語の会話だけでなくしっかりと読み書きできるようになるためには、本の多読が大切です。 […]